ものづくり最前線

謳立徳(中国)信息技術<オーリッド>

2008/2/5

“労働集約型IT”の新たな形

作業員1,000人以上。まるで工場のような中国的規模を誇る労働集約型IT(情報技術)企業がある。データ入力を手がけるオーリッド(本社・大分市)のオフショアセンター、謳立徳(中国)信息技術だ。ただ人海戦術に頼るのではない。エンジニアが日々開発を続ける斬新なノウハウを武器に、テクノロジーとスケールを兼ね備えたBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の新たな分野を切り開こうとしている。

三浦社長(右)と福田総経理
三浦社長(右)と福田総経理

通信販売の注文票、ローン審査申込書、病院の検査依頼書、各種入会申請書……。巷にあふれる帳票をコンピューターに打ち込み、管理しやすいデジタルデータ化するのがオーリッドの仕事だ。

同社の設立は2001年。大手電機メーカーのエンジニアとしてOCR(光学文字認識)技術の開発を手がけていた三浦雅弘社長が、データ入力市場の将来性に目をつけて起業した。「手書き情報に対して機械での自動入力には限界がある。どうしても手入力によって対応することは避けられず、ならばそうしたバックオフィス業務を集中的に処理するシステムを作りたかった」と三浦社長は振り返る。

データ入力業務はこれまで企業が自前で行うことが多かったが、社内で専属のオペレーターを抱えたり、社員が単純な入力作業に勤務時間を割くことは企業にとって大きなコスト負担となってきた。もちろん、データ入力を請け負う専門会社は昔からあり、同社はむしろ“新参者”といえるが、三浦社長は「他社とはアプローチが違う」と言い切る。

同社の独自システムでは、まずクライアントが帳票を専用ソフトでスキャンして画像データ化し、それを住所、名前、数字などの項目ごとに分割した上で、細分化した画像だけを同社に送信する。同社では送られてきた画像をもとに入力作業を行い、項目データのみの状態で返送し、クライアントがそれを全体データとして再構築するという流れになっている。分割した状態でデータの受け渡しを行うことで、全体情報が外部やオペレーターに漏れるリスクを回避でき、データが細分化されているため入力効率も高い。

セキュリティとスピード、そして精度。エンジニアとして理想を追求し開発したシステムを実際に自社で運用するため、04年に瀋陽で設立したオフショア拠点が謳立徳(中国)だ。

オフィスビルの3フロアを借り切った謳立徳(中国)の「生産力センター」では、1,000人を超えるオペレーターがモニターに向かって入力作業を繰り返す。項目ごとに分割された画像データを見ながら、崩れた手書き文字であっても瞬時に判断して打ち込んで行く。驚くべきことに、オペレーターのほとんどは日本語ができない普通の若者だ。

「要はパターンの反復練習なんです」と福田史浩総経理。住所、人名、専門用語など、業務に必要な単語をひたすら覚える。日本語として正しく読める能力はなくてもいい。どの単語を見たらどのキーをたたけば入力できるのかを、反射的に身に付けて行くのだという。

同社では常にキャパシティーの3割が余る体制で業務を行っている。突発的な受注に対応できるようにすると同時に、手の空いたオペレーターに入力スキルを磨く時間を与える狙いだ。豊富なデータ蓄積に基づく練習カリキュラム、最少のキータッチで単語を導き出せる入力ノウハウ、各種帳票の書式に合わせ最適にカスタマイズされたモニター画面。一見単純な入力作業の陰に、瀋陽だけで20人を抱えるシステムエンジニアの開発成果がぎっしりと詰まっている。

また、品質面でも一つのデータに最低3人、最大7人が関与することで入力ミスを徹底的に防止する。明確なビジョンと地道な作業、先端技術とスケールメリットの融合が同社の強みだ。

三浦社長は「日本でホワイトカラーの生産性が議論されるようになった。データ入力の市場はこれから爆発的に拡大する」と予測する。今年は謳立徳(中国)を3,000人まで増強する計画で、ベトナムでもオフショア拠点の開設準備に着手した。携帯電話のウェブ機能を使った入力など新たな作業モデルの開発も積極的に進めている。

「目指す究極が100点満点なら、現状はまだ12点」と話す三浦社長。データ入力産業のはるか先を見据えた挑戦は始まったばかりだ。【大連・福地大介】

<メモ>

会社データ

住所:瀋陽市瀋河区悦賓街1号方圓大厦13楼

TEL:86-24-22505580

FAX:86-24-22505578

URL:www.o-rid.com

資本金:1,000万米ドル(独資)

年商:19億円(07年グループ実績)

従業員:約1,200人

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