ステファン・レオンさん:マレーシア国際問題戦略研究所(ISIS)副所長・日本研究所長

「日本はアジアとともに生きるべきだ」そう主張するマレーシア国際問題戦略研究所(ISIS)のステファン・レオン日本研究所長。日本に対し対米依存からの脱却と地域経済統合への積極的な貢献を期待する。現在、日本・ASEAN交流年2003事業の一環としてISISが主催するセミナー『日本と ASEANの協力』(今月29、30日)の準備に忙しい日々を送るレオン日本研究所長を訪ね、日本とマレーシア・ASEAN関係の現状とあり方について話を伺った。(インタビュー・玉井諭)

次期政権も東方政策継承

2003/6/24

ステファン・レオン氏

――今回開催するセミナーの目的を聞かせて下さい。

日本とASEANの関係をより緊密にすることです。安全保障、情報通信技術、経済・金融の3分野で各国から専門家を招き意見交換をします。日本がASEAN諸国の発展をいかに手助けできるかもポイントになります。

――日本の東・東南アジアにおける役割をどうみますか。

日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国です。アジアそして世界で指導的役割を果たすのは自然なことです。でも日本の影響力はとても小さい。第2次大戦という歴史的な障害があるかもしれませんが、非軍事的な分野で日本の果たす役割は大きいはずです。

――日本の発言力が小さいのはなぜですか。

安全保障での対米依存です。日本は冷戦的思考にとらわれ過ぎです。潜在的な脅威ばかりを考えてエネルギーを浪費しています。

――どうすれば対米依存から抜け出せるのでしょう。

冷戦後の今、日本は東アジア域内で相互信頼関係を構築しなければなりません。日本はASEANと日中韓による東アジア経済会議(EAEC)構想など地域経済統合の実現に向け貢献すべきです。アジアとともに生きるべきです。我々にも他の地域と同様に地域経済統合を推進する固有の権利があります。なぜ米国が反対するのか全く理解できません。

――中国の台頭がASEAN、マレーシア経済へ与える影響をどうみますか。

中国の台頭は避けられない事実です。これをどうポジティブに受け止め利益の最大化を図るかです。中国の台頭を単に脅威とみているだけでは駄目です。まず必要なのが自国の国際競争力の強化。そして中国との良好な経済連携関係です。ASEANと中国はFTAを目指していますし、マレーシア企業は建設・住宅、観光、商品作物などの分野での中国市場参入に向け現地企業と戦略的な提携を行っています。同時に中国からの直接投資も積極的に受け入れています。

――日本とマレーシアの貿易・投資関係への影響は。

日本企業が中国へ投資を移していることは統計的に見ても限られています。なぜなら中国でビジネスをするのは容易ではないからです。それにマレーシアだけなら小さな市場ですが、ASEAN全体をみれば魅力的な5億人市場が存在します。英語の通用度、ビジネス・コスト、生活条件などでも優位性があります。

――政治的安定もですね。

政治的安定は経済発展の基礎です。我々にはマハティール首相の強力なリーダーシップがあります。これがアブドラ次期首相に受け継がれることも間違いありません。強力なリーダーシップがあれば、1997年のアジア経済危機の克服を見てもわかるように、創造性のある改革プログラムをすぐに実行に移すことができます。急激な民主化を経験したタイやインドネシアが混乱に直面したのとは対照的です。

――22年間続く東方政策(ルック・イースト・ポリシー)をどう評価しますか。

東方政策はASEAN諸国でマレーシアが日本と一番緊密な関係を築いていることを示す象徴です。マレーシアはこの政策を通じて、日本から経済発展の経験と秘訣、労働倫理、品質管理などを学ぶ機会を得ました。マハティール政権が日本へ派遣した学生、研修生の数は7,000人になります。さらに東方政策は現在、日本とマレーシアの2国間関係を超え第3世界諸国の発展を支援する枠組みにもなっています。日本政府からの資金援助のもと、アフリカなどから政府職員を招待して研修活動を行っています。

――アブドラ次期政権は東方政策を継承しますか。

間違いありません。この政策は2国間相互に利益をもたらすからです。日本にとってもASEAN地域への関心を示すシグナルになります。

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