吉川愛子さん:国際移住機関(IOM)事業担当官1975年生まれ、横浜市出身。上智大学比較文化学部卒業。横浜市役所で勤務後、英オックスフォード大学院難民・移民学修士号を取得。2001年に IOMに就職。03年からタイ在住。趣味はテニス、ジョギング。2年前から始めたジョギングは、国連がタイで毎年開催する10キロマラソン参加がきっかけ。 移民の権利向上図る「パーフェクトな解決法はない」2006/5/9 ![]() 国境を超えた人の移動は今後ますます活発化する。国際移住機関(IOM)の役割もここ数年でぐっと広がった。が、「移民」のイメージはまだまだネガティブ。IOMのタイ事務所で働く吉川さんは、経済成長の活力となる外国人労働者の権利向上に奔走する。 学生時代は「オタクな人が集まる」模擬国連委員会に所属。参加者全員が各国の大使となり、実際の国連会議で扱われている問題を話し合うもの。毎週会議を開き、最後は徹夜の合宿で決議案を採択した。 その後、横浜市役所勤務を経て、英オックスフォード大学の難民・移民研究所へ。世界中から集まる学生とフラットを借り、宿題に追われながらも和気あいあいの共同生活を送る。 卒業後、移民に関する研究所を立ち上げていたアルバニアで4カ月のインターン生活を送る。その後、在スイス・ジュネーブIOM本部で半年のインターン期間を経て職員に。海外を渡り歩き「青春が飛んでしまった」と笑顔で振り返る。 ■国によって温度差 「移民」の定義はあいまい。学術的にも確立していないので、人口学、地域、政治、経済と多面的なアプローチが必要だ。 また、国によって温度差もある。米国、カナダ、オーストラリアなどが積極的な移民受け入れを進める一方、日本では犯罪などがクローズアップされ、暗いイメージが一人歩きする。移民はどこの国もが抱える課題で「パーフェクトソリューションはない」。必要なのは、合法的に移民を受け入れる体制構築と、出入国をきちんと管理するバランスだと語る。 タイは移民の送り出し国であるのと同時に、受け入れ国でもある。急速な経済発展で周辺国からの外国人労働者は激増。ミャンマーからタイ国境周辺に流れてくる難民も後を絶たない。最近は米国、オーストラリア、北欧などの国々が東南アジア地域からの難民受け入れを拡大しており、吉川さんが空港まで難民を送ることも。 現在は、2004年末に発生したインド洋大津波で被災したミャンマー人労働者の人道的支援に携わる。DNA鑑定による地道な身元確認作業は今もなお続く。また、タイ労働省などと移民の権利向上を目指す啓発プロジェクトも立ち上げている。労働省や厚生省など関係機関との交渉力が試される。 ■何でもありの発想 国が違えば見方も違う。「何でもありから生まれる発想力はすごい」初めは世界各国から集まる同僚やタイ人スタッフとの意見のすり合わせにとまどったが、「何でもありでも何とかなる」柔軟な考え方を学んだ。 「私たちはプロジェクトを売っている身。新しいコンセプトを提供していかなければいけない」たくさんの移民と接することで、これまでの枠を取り外し、独自の視点を見いだしたい──。地道に活動するコツコツ派の穏やかな笑顔から強い意志が垣間見えた。(タイ編集部・七沢愛果) >>この目次トップへ[P R] [P R] [P R] |