刀根秀己さん:ITC Automobile Asia Pte., Ltd.社長>商社・伊藤忠の8Division Companyの1つ、機械 Companyに属する自動車専門商社。インド、アセアン、中国をカバー。「今夜から今年23回目の出張」という直前、アジアの自動車の動き、アセアンの位置付けを聞いた。 車一筋、アジア1,000万2003/7/22 ![]() 商社マンは世界を駆けるのが当たり前だが、駐在となると地域が偏りがち。この人は異色だ。72年入社し7年間、管理部門の海外総括部に在籍、その後異動した営業部門の自動車部門で「いすゞ」を担当して以来、車一筋。スペイン語研修でのメキシコ留学を含め在勤31年のうち19年が海外勤務。ナイジェリア・ラゴス(80年〜82年)、パナマ(87年〜93年)、中国・北京(95年〜98年)、英国・ロンドン(98年〜03年)、そして今年1月からシンガポールへ。商社マンの醍醐味を味わった。 ナイジェリアは「当時石油ブームに沸き、年間20万台の日本車を輸入する国」で、車販売の突撃隊長を務めたという。 パナマは独裁者ノリエガ将軍追放へ米軍が攻撃へリ「アパッチ」で猛攻する現場にいた。89年12月20日未明、伊藤忠駐在員家族も含め30数人がクリスマスパーティーを終え帰宅した直後だった。「アパートの22階から双眼鏡で攻撃の様子がよく見えました」それから街は略奪の嵐が吹き荒れ「イラクの光景と同じでした」。全員がパナマに2週間閉じ込められたという。 パナマは中南米唯一の米ドル使用国で金融センターでもあり、業務はファイナンスが主体だった。 北京は「着いたときはポケベル全盛期、それがあっという間に携帯電話へ変わりました。物すごいスピードで変化するのを目の当たりにしました」。「古い街並みが次々と消え高層ビルに、高速道路も都心から万里の長城の八達嶺まで完成に1年半です。激変の時代でした」。車も年間登録台数が50万台だったのが、数百万台に成長した。「ここでは事業の拡大が仕事だった」というのも頷ける。 ロンドンは「欧州事業の整理と新しいビジネスの確立、ロジスティックと3国間貿易が主体でした。機械全体を見ていました」。 シンガポールは資金調達、情報、地政学的優位性でアジアのハブの機能を持っている。「ファイナンス、事業管理、3国間トレードの業務が主たるものです」 メーカーも出ていない国での切り込み隊長→ファイナンス→事業拡大→3国間貿易→今その総仕上げ「いや、これは私の思いです」、という道程のようだ。 途上国では1からすべてやるが、成熟した市場の欧州などは、メーカーとの分業がより鮮明化し、商社はディーラー、ファイナンス、ロジスティックなど専門分野へ「客に近い川下の業務」を受け持つ。そこで商社の「組織化能力」「専門性」「客に近い現場」の威力が発揮されるという。 ではアジアの位置付けはどうか。 「アセアン、中国、インドを合わせると現在500万台強。1,000万台時代も5年はかからないと思います。生産と消費の大アジア圏です。それぞれの地域が先進国とタイアップして、生産の住み分けが進むと思います。」その証拠に、タイで目立つピックアップ・バン、インドネシアでは箱型、中国、インドは乗用車といった特徴を挙げる。 純国産車の国家プロジェクトを持つ国はどうなるのか。「車にアイデンティティーなどないと思います。マレーシアのプロトンの心臓、エンジンは三菱自動車製ですよ。ノキア、モトローラにしろその製品は大半ブランドのないメーカー”EMS”が製造している時代です」だから共通部品を相互に使用し、域内の取引が活発になると説く。 当面は金融危機を乗り越え、一皮向けたタイ、人口が多いインドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンがターゲットのようだが、「かつてCNNニュースが中南米を平準化したように、アジアの中産階級化が急速に進むでしょう」。さすが各国情勢に明るい。それもそのはずだ。 見てくださいと出された手帳に国名がずらずら。「最低一泊した事のある国名。ある時から記録し始め、50カ国迄は早かったが、それ以降は亀足。今夜から今年 23回目の海外出張ですが、今年は未だ新規宿泊国はなし」しめて現在宿泊77カ国。「パナマ時代が180回、欧州時代が190回出張している割りには増えないものです」 「今、自宅でランの花を6種類育てています。シンガポールらしいものをと始めました」ゴルフよりは、心を奪われる様子。「メキシコ時代にはスペインの銀貨200枚集めたが、いざ帰国し荷物を開けたらなくなっていた」といかにも残念そう。パナマではスワロフスキーのクリスタル動物100個ほど買い集めたという。 日本には社会人の長女、英国の大学を卒業し9月から帰国して会社勤めを始める二女。三重県松阪市出身、54歳(インタビュー・小森孝光) >>この目次トップへ[P R] [P R] [P R] |