モスフーズ・吉井靖範さん

1963年生まれ、大阪市阿倍野区出身。関西外大スペイン語学科卒。独身。趣味は格闘技。高校時代は柔道部に所属し、ハワイで空手を習った。タイでは、「ムエタイ(タイ式ボクシング)をやりたい」。もう1つの趣味は食べ歩き。仕事が忙しく、どちらも当面はお預けのようだ。信条は「あきらめない」。

「この味のハンバーガーはタイにない」暑く、温かい新天地

2007/5/24

モスフーズ・吉井靖範さん

手作りの味、モスバーガーがタイに進出した。3月30日にオープンしたバンコク都心の1号店。

タイ法人の社長として、自らガラス張りのキッチンに立つ。来客数は予想の2倍に上り、「うれしい悲鳴です。やっと対応できるようになった」。従業員に指示を飛ばし、てんてこ舞いの店を切り盛りする。

来客は600組を超える日もあり、約8割がタイ人。日本と同様、注文を受けてからハンバーガーを作る。他店より時間がかかるため、「待ってくれること」も予想外だった。顧客のクレームを心配していたが、「それがない。分かってくれている」と驚いた。

■ベルトの穴2個

大阪で育ち、大学卒業後にモスフードサービスに入社。店長や各地のエリアマネジャーなどを経験し、1992年にハワイに赴任した。ワイキキなど4店の運営に携わり、13年後に本社に帰任。商品開発に配属されたが、1年半後に突然、出向を命じられ、昨年9月に初めてタイに来た。

1号店の開業準備に奔走し、レジやテーブルなど、思い通りの資材調達に苦労した。オープン後も、営業時間の朝10時から夜10時まで店に出ずっぱり。すっかり体重が減り、ベルトの穴が2個縮まった。

そんな努力が報われ、今では「高い品質の物を出していけば店は増えていくと思う。この味のハンバーガーはタイにはない」と自信を深めつつある。

顧客のタイ人は老若男女さまざま。声を掛けると、片言の英語で答えようとしてくれるのも、新鮮な驚きだ。「暑い」というだけの初印象だったタイで、ハワイとは違う「人の温かさ」に気付いた。将来の独立を狙って入社したが、「いまが独立しているようなものですから」と充実の笑顔を見せる。

■「アロイ」が一番

本社の計画通り、さらに年内に1店を開き、2009年までに12店体制を築くのが目標だ。1号店の人気ぶりに、出店の引き合いは殺到している。だが、多店舗展開には従業員の確保が不可欠。日本でもアルバイトが1人前になるには3カ月かかる。現在の従業員は24人。人材を募集し、現場で仕事を教え、数倍の人数を育てる必要がある。

身振り、手振りに英語を交えて指導する毎日。タイ人に対する評価は、決して日本人に劣っていないという。「気が利く人がいて、利かない人がいる。駄目な人は駄目。日本でもタイでも一緒ですよ」

「アロイ(おいしい)」と言ってくれる顧客や、毎朝やって来るリピーターもいる。やはり、「おいしい」と言われるのが一番うれしい瞬間だ。深緑のエプロンと帽子のユニフォーム姿。にぎわう店内に鋭い視線を向けながら、「私は現場の人間ですから。これからも店で、現場でやっていきたい」と言い切った。 (タイ編集部・井口達朗)

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