祖谷悟さん:東映アニメーション・フィリピンマネジャー「ドラゴンボールZ」は実はフィリピンで作られていた――。アニメーション製作大手、東映アニメーションは作品量の約70%をフィリピン現地法人に移している。日本を代表する文化の一つとして海外でも高い評価を得るアニメ。日本文化を海外から支える実態について東映アニメーション・フィリピンの祖谷悟(そやさとし)マネジャーに聞いた。 アニメが結んだフィリピンとの縁2003/8/19 ![]() 東映アニメがフィリピンに事務所を設立したのは1986年。当時は生産コストを抑えるため、日本企業が海外進出を活発化させていた時代。アニメ産業もその例外ではなく、同社は韓国を皮切りに、台湾、フィリピン、タイ、マレーシアの順で生産拠点を拡大していった。 ところが、進出先にもコスト高の波が押し寄せ多くが撤退。制作現場としての海外拠点はフィリピンだけが残った。競合も全て当地から引き上げてしまい、日本のアニメ会社として国内で唯一操業を続ける。 距離が決め手 「入社したのは、こちらに事務所ができたのと同じ年です」と祖谷さん。日本アニメの多くが外国で作られている現状をその時に初めて知ったという。フィリピンへの進出には日本との距離が一つの決め手となった。かつては貨物輸送に大きく依存していたため、航空便で2日という位置関係は魅力だったからだ。 当時の従業員教育について祖谷さんは、「今ほど日本アニメの認知度はありませんでした。採用した人には色付けなど、一から業務を覚えてもらいました」と述懐する。さらに日本から講師となる社員を呼んだり、現地スタッフを日本に派遣して実地研修することで、技術移管を進めた。 ちなみにフィリピン人の奥様とは当時の日本研修がきっかけで知り合ったそうだ。「彼女は撮影の技術を習いに来ていまして、私は日本で研修生の担当だったんです」。その後92年に祖谷さんは奥様の故郷へ赴任することになった。 明るさに感心 公私共にフィリピンの人びとに囲まれる祖谷さんにとって、地元従業員の仕事ぶりはどう映っているのか。祖谷さんいわく、「明るいですし、私のレベルでは勤勉だと思います」。作品を監督する日本のアニメーターのフィーリングや感性といった部分で、作業のやり直しも求められる世界にあって、明るく気分を切り替える地元スタッフに祖谷さんは感心したという。柔軟性に加え、創造性も高いとされるフィリピン人。芸術分野には向いているのではと尋ねたところ、「それはむしろこれから磨いてほしい部分です」との評価が返ってきた。プロとして現場に求める要求は厳しい。 完成品を作りたい 事務所設立から17年。「ベテラン職人たちも増え、社内で研修ができるまでになった」と祖谷さんは胸を張る。現在は人気アニメ「ワンピース」など5本の作品を扱い、背景画をはじめ、動画の作成や、コンピューターによる着色作業など総勢160人以上の従業員がフル回転している。 将来は脚本や構成も手掛け、作品を一本丸ごと作れるようなスタジオにするのが祖谷さんの目標という。年内には手狭になった事務所の移転を控えており、ますますフィリピン産日本アニメを目にする機会が増えそうだ。 アニメが縁で奥様と国際結婚し、当地での滞在は10年を越える。「(日本かフィリピンか)楽な方を選んだんですよ」と祖谷さんは笑う。真意を尋ねると「日本で外国人が暮らすのは大変ですからね」。最後は愛妻家の顔になった。【インタビュー:山田敦也】 >>この目次トップへ[P R] [P R] [P R] |