永嶋宏一さん:テルモ株式会社クアラルンプール支店長体温計の国産化を目指し、細菌学の研究で有名な北里柴三郎博士ら医学者たちが創立したテルモ。現在は、注射器、血液バッグなどさまざまな医療製品を開発、世界150カ国以上で提供する。医療の表舞台に立つ医師たちの裏方として治療に欠かせない機器を供給する地味な仕事だが、医療の発展を願う気持ちは同じ。途上国を中心に数々の新規市場開拓を手掛けてきたクアラルンプール支店長の永嶋宏一さんにお話をうかがった。 願いは途上国の医療発展2003/12/9 ![]() ――これまでの海外勤務について聞かせて下さい。 欧州、タイに駐在経験があります。欧州ではベルギーを拠点に2年余り、東欧とアフリカを担当しました。日本に帰って、そしてタイです。インドシナ半島を担当して、ラオス、カンボジア、ベトナム、ミャンマーで新規市場の開拓をしました。マレーシアは2000年からで4年目になります。 ――途上国での新規市場の開拓は大変なお仕事ではないですか。 大変というよりも、やりがいがあって楽しいですよ。その国の医療の発展に何かお役に立っているのかなという気持ちがあるんです。スリランカに行った時、病院のあちこちで悲鳴が聞こえてきて、「どうしたの」と聞くと「麻酔なしで手術をやっているからだ」と返事が返ってきました。まだそういう場所が地球上にある。安心できる商品を使って、医療のレベルをあげてもらいたいなと。 ――入社のきっかけは何ですか。何か途上国を舞台にする仕事を志していたとか。 ある広告会社から内定をもらった後、断られまして……、そこで大学の就職課に行ったら、テルモという会社があると。永嶋宏一は聞いたことあったけど何をやっている会社か知りませんでした。面接を受けに行って、ロビーに飾ってある商品をみて医療関係の会社なんだと知りました(笑)。テルモでも最初は広告希望でした。 ――当地の最近の業況はいかがですか。 欧米系メーカーとの競争が厳しくなっています。特に海外進出にかける欧州系はコスト意識が強い。その点、日本メーカーは政府の規制や商習慣に守られ競争にさらされていない。マレーシアでは公共入札が7割を占めます。価格を重視しますから、われわれのようなハイエンドな価格帯では厳しい。それに細かな注文をつける日本のユーザーを意識した商品をこちらに持ってきても、逆に使い勝手が悪いという反応になることもあります。難しいところです。 ――今年の新型肺炎(SARS)騒ぎでは忙しかったでしょう。 特需はありませんでした。政府は国境や空港で大掛かりな体温測定装置に予算を割り当てましたが、シンガポールと違って、われわれが扱っているような家庭用体温計を一家に1本ということにはなりませんでした。 ――マレーシア、東南アジアでの医療機器市場はどうですか。 大きくはなっていますが、まだ小さい。注射器を例にしても、日本では国民1人当たり5〜6本、タイ、マレーシアでは1本にもなりません。まず医療施設とスタッフが十分にそろわない現状があります。その辺りが改善されてくればもっと大きくなると思います。 ――何かビジネス戦略のようなものはありますか。 テルモでは途上国に製品を売り込むため、パッケージで面倒を見ます。単にモノだけ渡してもダメ。ソフトとハードの両面から医療の発展に貢献する考え方です。日本から医師の派遣や医療器材の使い方のトレーニングをします。そうすれば長期間にわたるビジネス関係の構築にもつながります。 愛犬ポコペンとの2人暮し。趣味は旅行で、長期になれば愛犬もホテル住まいになるという。「仕事で出張に行ったら半分は旅行みたいなもので」と笑う。出張先では夕方 5時になるとオフィスを飛び出す。「やはりその国、その国の人を知らないとビジネスはできませんから」。マレーシア駐在の後は、「また、アフリカに戻りたいとも考えています」。途上国での医療の発展を心底願う熱い思いがたぎる。埼玉県出身の44歳。(インタビュー・玉井諭) >>この目次トップへ[P R] [P R] [P R] |