台湾  2009年5月21日(木曜日)
【台湾新時代〜馬政権1周年特集〜】(2)台北駐日経済文化代表処許世楷・前代表[政治]

日台の平等な外交関係の構築を

台北駐日経済文化代表処・許世楷前代表

馬英九政権発足1周年特集の第2回目は、対日外交に焦点を当てる。昨年6月まで4年間、駐日大使館に相当する台北駐日経済文化代表処の代表を務めた許世楷氏(74)に、馬政権の対日政策に対する評価や友好関係発展のために双方が何をするべきかなどを聞いた。【志村宏忠】





―この1年の馬政権の対日外交をどう評価しますか。

「真意が見えない、訳の分からないところがあります。馬英九総統は昨年、今年と台南で八田與一の慰霊祭(5月8日)に出席し、彼の功績を賞賛しています。その一方で、昨年6月に尖閣諸島沖で台湾の漁船が日本の海上保安庁の巡視船と衝突し、沈没する事故があった。劉兆玄・行政院長が「日本との一戦も辞さない」などと言ってみたり、尖閣諸島に軍艦を派遣しようとした。戦争の一歩手前のような騒ぎでした」

「最近では交流協会の齋藤正樹代表が台湾の地位未定論について言及したところ【注1】、現政権に近い台湾人の学者が馬総統に注進して、ことさらに問題視した。代表と言っても、交流協会は実態は民間団体に過ぎません。馬総統が問題を小さくしようとすればできなくはない。こういうことが続くと相互の信頼感が失われてしまう。日本の人たちも不愉快な面があるはずなんです」

「日台外交でなにか大きな懸案があり、それを有利に進めるための手段として手を出すのであればまだ理解できる。しかし、そんな問題はありません。日本側をたたいたところで得る物はない。こうしたやり方は不毛です」

【注1】国史館の林満紅館長が発表した「台湾は1952年4月の日華平和条約の調印をもって中華民国に返還された」という説に、齋藤代表が「台湾の帰属は決まっていない」と反論し、外交部から厳重抗議を受けた。

―現政権の対日外交に求めるとすればどんなことですか。

「中台間の接近、交渉が続いていますが、その真意がどこにあるのかを説明しないと日本側も安心できない。(代表辞任の前に、馬総統に慰留されたが)私が代表を辞めた最大の原因がそこです。私には(馬総統の考えが分からないので説明が)できない。私が在任中、例えば日本の首相が中国を訪問する場合、その前後にブリーフィングをして日本側の意図を伝えてほしいと要求していました」

「外交で一番大きな問題はサプライズなんです。『なんでこんなことになったのか』ということが起こると、その先、信用できなくなります。パイプがつまることがないようにするのも大事。パイプがつまり、中が腐っていてふたを開けたらびっくり、ではいけません」

―逆に、台湾側が日本側に求めるとすればなんですか。

「日本が中国と友好関係を築くことには反対しない。両蒋(蒋介石、蒋経国)の時代と違い、『向こうを取るか、こっちを取るか』とは言いません。ですが、台湾を犠牲にして中国の歓心を買うようなことはしてほしくない。それが基本で

す。この点については、日本はだんだんと大胆になってきている。2005年2月の2プラス2(日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会、【注2】)で台湾海峡の問題が言及されました。かつての日本では表明したがらなかったことです」

【注2】日米の安全保障関係文書で初めて台湾問題について言及、「台湾海峡問題の平和的解決を促す」ことを日米の共通戦略目標とした。

―日本の政治家などがもっと台湾を訪れて、台湾を理解する必要があると思いま

せんか。

「その通りですね。麻生(太郎・首相)さんが自民党政調会長の時代に台湾に来たことがあります【注3】。こうしたハイレベルの交流が続いています。ですが、それをもっと増やしてほしい。

「日本は国連の常任理事国入りを目標としています。台湾はずっと支持している。そういう国・地域は、簡単にはあると思えない。観光を通じた交流も大切ですが、台湾が日本の国益にどうかかわっているのかを判断できる人たちがもっと台湾に来てほしいです」

【注3】麻生首相は自民党政調会長だった2003年4月、超党派の日華議員懇談会の団長として、陳水扁総統(当時)を表敬訪問している。

―3月に民進党の蔡英文主席の訪日に同行しました。

「蔡主席は頭脳明晰で、(台湾の主権を維持する)立場も明確です。それを日本の主要政党の関係者にきちんと説明し、自身の能力を証明しました。日本の政界における評判は非常に良い。短い滞在でしたが、ある程度は成功したと言えます」

「今後は12月の統一地方選挙を前に党を結束させることができるか、選挙戦ではリーダーシップをどう発揮するかが大きな試練になる。それを乗り越えられれば次期総統選挙の候補になるでしょう」

―許さんは学術畑の出身です。過去に、自身が駐日代表になると考えたはことあったでしょうか。

「実際にやると考えたことはなかった。ですが、日本の大学で国際関係学科作ったのは、私が教えていた当時の津田塾大学が最初でした。無縁ではないんです。国際関係には力を入れていました。日本にいた時は、外務省から中国・台湾問題に関して意見を求められたり、(国民党のブラックリストが解除され1992年に)台湾に戻ってからも外交に関する意見を色々と述べていました」

―退任後も、日本から来た人たちとの面会や会議出席などで多忙のようですが。

「そういうことが私の台湾に対する貢献のしどころではないかと思っています。私にできるのは日本と台湾の関係を良くすること。それもできる限り対等な形が望ましい」

「(許氏が在任中に)台湾人の日本へのノービザ観光が実現しましたね。あれもいくつかの意味があります。日本だけビザ免除の期間が12年続きました。日本がアメリカとの関係が平等であるかを気にするのと同じで、日台間でも不平等な物は変えてゆく。それがお互いの親近感を盛り上げることにもなるんです」

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