シンガポール 2009年7月9日(木曜日)
日本企業は情報発信を、事業連盟CEO[経済]
金融危機に端を発した世界同時不況の影響で、特に外需頼りの国・地域は大きな打撃を受けている。シンガポールも例外ではなく、今年の経済成長率は大幅な減少が予想される。このような状況下で、国内経済を支える財界のトップは現在の動向をどのように捉えているのか。7日にインターナショナルVIPクラブ・シンガポール主催の下、日本人会館で行われた公開セミナーの講師を務めたシンガポール事業連盟(SBF)のテン・テンダー最高経営責任者(CEO)に、NNAがシンガポール経済の現状や日本との関係について聞いた。

――現在の国内経済について意見を聞かせてください
「今回の不況は先行きが不透明なのが特徴だが、4〜6月期の経済統計は前期に比べればよくなっている。今後、欧米で何も問題が起きなければ底入れすると考えられるが、実際にはどうなるのか分からない。ただ、先のことを考えてばかりいても仕方がないので、景気回復後を見据えた準備作業を進めている。特にシンガポールでは政官民が一体となり、人材への投資を積極的に行う姿勢は変わらない。また、先が見えないと元気がなくなるので、今はステップアップの時期と考えるべきだ。狭い国土で、市場規模も小さいので、国内経済だけでは成り立たない。そういった意味では、米国頼りではなく、新しい市場の開拓が欠かせない」
――新しい市場とは具体的にいうと
「約6億人の人口を抱える周辺諸国の東南アジア諸国連合(ASEAN)はもちろん戦略的に大事だが、中国、インド市場も大きい。特に金融危機後は、両国ともに景気刺激策として莫大な予算を計上しており、これに関連した公共投資をはじめとする諸事業にシンガポール企業がどれだけ参加できるかが大きなポイントになる。このほか中東、アフリカ、南米などにも目を向けている。アフリカはこれから発展していくという意味で一つの投資先で、開発に必要な管理能力や専門知識、物資などに貿易チャンスが出てくるだろう」
――今後、地場企業にとって何が重要でしょうか
「競争力を保つことと生産性の向上が非常に重要だ。大事なのは技術、ビジネスプロセス、情報通信技術(ICT)などを活用すること。この中で日本の果たす役割は大きい。日本の市場は成熟しているが、後継者が少ないことや、高い技術を持っていても生産コストの問題があり、海外に移転する必要が出てくる。また、日本の中小企業はシンガポールでは大手企業の規模になる。従って、シンガポールと協力する機会が増えてきたと感じており、SBFでも積極的に日本の中小企業と提携していく活動を行っている。一方で、欧州の中小企業も成長性の高いアジア市場に入り込む窓口としてシンガポールに注目し、シンガポールもそれを受け入れる体制を整えつつある。アジアの場合は日本からの投資を期待している」
――シンガポールの経済界は日本をどのように見ているのでしょうか
「高度な技術を有し、従業員のサービス精神や忠誠心が高く、1つの物事を徹底的に追求してやることに定評がある。マイナス面は、あくまでも日本人の中で完結してしまう傾向があることだ。いい技術を持っているのだから、もっと幅広く活用していく方がいいのではないか。今だと環境保全、エネルギー関連は非常に優れた技術をもっているので、今回の不況時に生かせばよい。付加価値の高い新しい分野への技術力を持っているし、日本的な経営の良さもある。それを海外に発信していくべきだ。そうすれば日本が世界でより認められて、真の国際化につながるのではないだろうか」