タイ 2009年10月21日(水曜日)
国鉄経営改善に打撃、労組の職務放棄[運輸]
タイ国鉄(SRT)は、労働組合が16日から南部路線で列車運行の職務を放棄し、運休に追い込まれている件で、数千万バーツの損失が出る見通しだ。財務改善が課題となっているが、度重なるストライキやサボタージュで利用者離れも懸念される。経営効率を高めるための複線化など整備事業も遅れる可能性が出ている。
20日付各紙によると、ユタナー総裁は、運休による損失が16〜19日のみで、2,000万バーツを超えたことを明らかにした。貨物部門が600万バーツ、旅客部門が1,400万バーツ。運行再開の遅れに伴い、損失は拡大する見通し。
国鉄は赤字が続き、昨年末時点の財務内容は、944億バーツの資産のうち債務が815億バーツ。経営立て直しが急務だが、全くめどが立っておらず、効率化のための組織改革は労組の反対でとん挫している。
コーン財務相は19日、労組の職務放棄がタイの輸送部門の競争力強化を遅らせると主張。政府は景気刺激策の一環として、複線化などに5,025億6,000万バーツを投じる計画だが、現状では実行に移せないと述べた。
労組は16日、「一部車両に不備があり事故の危険性がある」として、南部線10本、東北線4本を運休。翌日以降も南部線を中心に運休し、19日時点でもソンクラー県のハジャイ駅以南で全面的に停止している。
国鉄は技術者を派遣し、車両を検査したが、不備は見つからなかった。職務放棄で実質的なストに突入したとみている。
16日から数回にわたり労使が交渉したが、労組は車両整備が終わるまでは運行できないと主張し、物別れに終わった。
ただ、国鉄によると、20日午後にバンコク〜ヤラー線など一部路線が運行を再開した。
■輸送協会が怒り
タイ国際貨物フォワーダー協会(TIFFA)のスウィット会長は19日、労組は利用者のことを一切配慮しないと非難し、政府は労組を解散すべきと訴えた。ストを行うならば、予告するべきと主張。予告がなかったため、ほかの輸送手段を手配できず、依頼主の信頼を失ってしまったと述べた。
国鉄に依頼していた貨物をトラック輸送に振り替えると、コンテナ1台当たり600米ドルの損失が出るという。
■退職職員を再雇用
政府は20日の閣議で、運輸省が提案した、退職した元職員の再雇用、鉄道職員養成学校の学生を雇用するための省令改正を承認した。100人以上を採用する計画。
ソーポン運輸相は閣議後、省令改正は即日付で有効と説明。退職した職員は経験豊富であり、即戦力として期待できると述べた。
また、正当な理由がなく職務を放棄した職員は罰する方針であり、15日以上放棄した職員は解雇すると表明した。
労組は、スラユット暫定政権時の2007年10月と今年6月にも大規模なストライキを実施した。組織改革の阻止が目的で、政府が計画を取り下げ、ストは成功した。
今回のサボタージュは車両の整備不良を理由にしているが、組織改革を狙う政府をけん制することが目的とみられている。
予告なく運休したり、運行中の列車を途中で止めて乗客を置き去りにするなど利用者に配慮しない手法に反発が高まっている。南部が基盤の最大与党・民主党も面目を失った。
20日付ネーションが国鉄内部情報として報じたところによると、サボタージュの中心になっている組合員は、空港占拠で知られる民主市民連合(PAD)の影響下にあり、PADのメンバーと支持者のみがサボタージュを支持しているという。PADが設立した新政治党のソムサック副党首は、元国鉄労組委員長。