香港  2009年12月16日(水曜日)
【マカオに賭けた日本人】サウスチャイナ(マカオ)トラベル、渡邊章太郎さん[観光]

「マカオ生まれ、4カ国語を操る国際実業家」

世界遺産にカジノ、リゾートホテルとさまざまな観光資源がそろったマカオ。ここ数年は日本でマカオブームが起きているが、サウスチャイナ(マカオ)トラベルはそのはるか前からマカオに根付く数少ない老舗日系旅行代理店だ。渡邊章太郎さんは父親が設立したサウスチャイナの2代目で、自身でもエンターテインメント企業を立ち上げた実業家。マカオ生まれの渡邊さんに返還前後のマカオについて聞いた。【香港華南編集部・倉橋明日香】



――返還前のマカオの様子について教えてください。

とてものどかな雰囲気でした。大都市、香港の隣にある小さな街という感じで、観光客も日帰りが多く、宿泊することはほとんどありませんでした。色々な意味で閉ざされた環境でしたね。返還前はポルトガル人統治の下、法整備はあまり進んでいませんでしたが、それでも経済、社会が成り立っていました。ポルトガル本国の生活リズムがそのままアジアに再現されており、今振り返ると古き良き時代だったと感じます。

私自身はマカオで生まれ、中学3年まで現地の学校に通いました。クラスメートはマカオ人やポルトガル人が大半で、日本人は私1人でした。その後高校から東京へ渡り、大学、社会人を経て、返還直前の1999年3月に再びマカオへ戻ってきました。

――返還後に一番変わった点はどこですか?

エドムンド・ホー行政長官がカジノ経営権を開放したことが大きな変化をもたらしました。政府は2002年、これまでスタンレー・ホー氏が独占していたカジノ経営権を3社に開放。その後それぞれ1社に限り経営権を分売することを認め、現在の6社体制になりました。

スタンレー・ホー氏時代のマカオは「賭博」というイメージが強かった。そこに米系カジノが参入したことで、エンターテインメントの要素が加わり、発展の可能性が大きく広がりました。

これまでのカジノ一辺倒ではなく、ホテルや飲食店、商業施設などを加えた総合リゾート地に変貌しました。

MICE(ミーティング、インセンティブ、コンベンション、エキシビション)への方向転換が大きいですね。ラスベガスにおける成功のカギはギャンブルのみではなくMICEの要素が大きく関わっていることです。マカオもカジノプラスアルファの経済構造に向かっており、今はその過渡期でもあります。その点で、マカオはラスベガスという前例があるので、今後進むべき方向性を見定めやすいと思います。

――MICE産業の現状は?

ハード面では素晴らしい施設がそろっています。ここ数年、大型のトレードショー(展示会)を開催した経験も得られました。ただソフト面が追いついていないことが浮き彫りになっています。

たとえば、マカオへのアクセスやマカオ内の交通、物流、サービス分野で課題は多いと感じます。マカオで展示会を開催する場合、世界中から多くのサプライヤーとバイヤーが集まりますが、乗り継ぎが不便で時間と労力が必要。また出展企業は、展示商品のサンプルをまず香港に運び、そこからマカオに貨物を積み替えなければならず、時間とコストがかかります。ただ交通、物流網が整っていないことは、大きなビジネスチャンスにつながるとも考えられます。

――日本では数年前からマカオブーム。旅行業界ではどのような変化がありましたか?

確かに日本人観光客はここ数年で急激に増えました。

04年ごろまで、観光地としてのマカオは香港のオプション的な存在でした。朝8時ごろのフェリーで来て、セントポール天主堂跡、媽閣廟、セナド広場などを回り、昼食にポルトガル料理を食べ、午後3時ごろのフェリーで香港に帰るパターンが基本でした。

それが最近はマカオを目的とした観光客が増えました。07年のベネチアンの開業が大きいと思います。日本のメディアがこぞってマカオ特集を組み、世界遺産、カジノ、リゾートホテルなどさまざまな娯楽要素を備えたマカオを日本に紹介しました。

当時はうれしい悲鳴を上げるほど忙しくなりました。

――旅行業以外に、結婚式やイベント業務も手掛けていますね。

その通りです。イベント事業は、日本のアーティストのマカオでのコンサート誘致など。

08年には、DJ・OZMAが日本のファン250人を招いてプライベートライブを行い、弊社も関わりました。現在も日本のあるアーティストに、事務所を通じて話を持ちかけています。

ミスコンの開催も検討しています。実は08年にAGEC(アジア・ゲーミング&エンターテインメント・コンサルタンツ)という会社を立ち上げました。もともとカジノ業界情報の提供などを行っていましたが、将来的には現在サウスチャイナが手掛けているエンターテインメント事業をこちらに移管する計画です。

――日系企業がマカオに参入するチャンスはどこにありますか?

マカオではサービス業が参入する余地はまだあると感じます。交通、物流、人材教育、ホテルのアメニティ分野などで日系企業は力を発揮できるのではないでしょうか。日本のいいモノ、いいサービスを売り込むチャンスはたくさんあると思います。

――エドムンド・ホー政権の過去10年をどう評価しますか?

10点満点で9点。マカオを世界的な総合リゾート地に発展させた功績は評価に値します。

マイナス1点は、成長のベクトルがほぼカジノ産業に向けられてしまったこと。カジノが全体をけん引する形で経済成長したことは確かです。ただ発展がカジノ業界のみに支えられており、経済の構造にリスクが潜在することも考えられます。

このほか、ホー長官が行った定額給付金配布については、経済成長の恩恵を市民に公平に還元する目的で行ったことは市民に歓迎されましたが、この配布は本当に正しい使い方なのか疑問視する声もあります。消費刺激という意味では一定の効果はありました。

――20日に崔世安(フェルナンド・チュイ)新行政長官が就任します。

崔次期長官はもともと社会文化司長で、観光業界のエキスパート。MICE産業の推進に注力することを宣言しており、弊社の今後の方向性と重なります。マカオを拠点とした長期的なイベントの開催が増えることを期待しますね。

※本連載ではマカオに挑んだ日本人3人にそれぞれのマカオについて聞きます。16〜18日の3日連続掲載です。

………………………………………………………………………………

サウスチャイナ(マカオ)トラベル

渡邊章太郎さんの父親である渡邊彰さんが1979年に設立。航空券・ホテル、現地ツアーの手配などを行う。章太郎さん自身は08年にエンターテインメント会社「AGEC(アジア・ゲーミング&エンターテインメント・コンサルタンツ)」を立ち上げ。日本語、広東語、英語、北京語を操る国際派。

[P  R]

[P  R]

[P  R]

NNA News Headline記事一覧

Yahoo!ブックマークに登録Yahoo!ブックマークに登録

ビジネスメルマガ NNA BUSINESS MAIL ASIA 知らないと損をする新鮮ビジネス情報

有料会員サービスのご案内

ウェブで読める「NNA POWER」、電子メールでお届けする「The Daily NNA」などアジア発の経済ビジネス情報を毎日配信。お客様のニーズに合わせた各商品をご用意しています

NNA POWER
ASIA PLUS
ASIA
会員サイトで経済ビジネス情報を毎日チェック。国別・業種別で使える検索機能付き

The Daily NNA
アジア各国版
ビジネスに直結するニュースをコンパクトにまとめて月〜金曜までPDF配信。経済統計や日本企業の動向など特集も充実

業界ニュース
日刊工業新聞
日刊自動車新聞
重化学工業通信社
アジアにいながら、ニュースをタイムリーに読む。業界専門紙ならではの詳細情報をどこからでもキャッチ。NNA会員には特別価格でご提供。

2週間無料トライアル

NNA中国コンサル

中国、アジア・エマージング株情報

アジア関連情報

  • トッピクス&特集・連載
  • コラム
  • Asia Watch
  • アジアちゃんねる
  • インタビュー
  • ブログ
  • セミナー・イベント
  • 会話の基本(音声付)
  • アジアの祝祭日
  • 出版物(書籍)

PICK UP !

Asia Watch

開放か閉鎖か、謎の国を追跡>


タイ研究の草分け的存在、赤木攻・大阪外国語大名誉教授による連載コラム


豪州各都市で開催される日本人関連のイベント


アジア・オセアニアで事業展開する日系企業の最新動向をチェック


アジアちゃんねる

街で見つけたちょっといい話から、ディープな裏側の世界まで。経済だけではわからない等身大のアジアがここにあります

コラム

アジア・豪州から毎日お届けする人気コラムです。経済ニュースを読む前にどうぞ