香港 2010年3月5日(金曜日)
地場企業の中東進出に商機、アブダビ銀香港支店長に聞く[金融]
アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国立銀行(NBAB)が昨年12月、香港に支店を開設した。フル銀行ライセンスを保有する本格拠点としては、中東銀で初となる。中国本土などアジアから中東インフラ事業参画を目指す動きが加速する中、これまで欧米系の国際銀行が手掛けてきた金融サービスを自前で提供することで商機が得られるとみる。初代香港支店長でアジア地域統括マネジャーの羅樹栄(アーネスト・ロー)氏に事業戦略を聞いた。

――まずNBABの海外事業の概要を。
当行の国際金融部門は世界12カ国・地域に41拠点を展開。営業利益ベースで全体の11.9%を占める。
事業モデルは市場により2つに分かれる。まずエジプトやオマーンなど中東地域7カ国ではリテールとコマーシャルが中心。エジプトなどでは外資銀最大の支店網を誇り、そのネットワークとブランド力を活用して現地で資金を集め、主に現地でUAE関連企業に貸し付けるなどして運用している。
第2のモデルはロンドン、パリ、ニューヨーク、香港の4地で手掛けるホールセール事業。香港ではこれまでのところ、香港政府の関係機関と取引を開始している。このほか東アジアの金融機関や大手企業も重要な顧客となる。
――中東系銀行の海外展開の現状は。
最も初期に海外進出を進めたのは、クウェート国立銀行(NBK)やサウジアラビアのアル・アフリー銀行(ナショナルコマーシャルバンク)などだが、シンガポールを拠点とするのが主流だった。理由は石油。中継地となるシンガポールには貿易業者や関連企業の本部が歴史的に多く、その需要を狙い進出した。
――NBABは近年、積極的に海外展開を進めている。
当行は過去5年間で最も海外展開を進めた中東銀と言える。現経営陣の方針として「最も国際化されたアラブ銀行」「アラブでナンバーワンの銀行」を目指している。
アジア本部に香港を選んだのは、中国を重視しているため。さらにNBKはクウェート関連企業との取引を中核としているが、われわれは事業モデルが違う。中国企業をターゲットにしている。
――中国や香港企業との取引にはどのようなモデルがあるか。
中東ビジネスを手掛ける中国企業は、貿易関係とインフラ関係の2種類が中心。われわれの当面の事業は、現地で受注を狙うインフラ企業のサポートにある。受注企業のビッドボンド(入札保証)を手掛けたり、現地での資金調達など。
これまで大手企業は世界的な大手銀行を通じて現地で金融サービスを受けていた。しかし国際大手は提携する現地銀行を通じてサービスを提供しており、顧客にとっては2重の費用負担が必要だった。当行との直接取引でコスト削減となる。
中東系銀行の拠点は現在、香港に5つあるが、駐在員事務所などが多く銀行業のフルライセンスを持つのは実質的に当行だけ。彼ら以上に主要な競合はHSBCやスタンチャート銀になるだろう。
――香港政府はイスラム金融ハブ化構想を打ち出しているが、香港でのイスラム金融事業への参入は。
政府がどうイニシアチブを取るかによるだろう。将来、政府がイスラム債(スクーク)などについて主導的役割を果たすなら、当行の持つイスラム金融の専門知識を提供して全面的に支援する。政府次第だ。
香港は税制規定の整備などまだ多くのインフラが必要になる。スクークを単発で出す程度なら半年以内にできるかもしれないが、込み入った法的枠組みの整備には最低でも1〜2年を要するだろう。どれほどの規模の市場を目指すかによる。
当行のイスラム金融部門は3年前に立ち上がったばかりだが、成長部門だと認識している。しかし事業の中心はあくまでも従来の金融だ。香港事業は現段階では従来の金融業に専念する。
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