ベトナム・インドシナ 2010年3月10日(水曜日)
日本、原発第2サイト受注狙う[公益]
鳩山由紀夫首相が先週、グエン・タン・ズン首相あてに出したベトナムの原子力発電所建設計画で日本の技術採用を要請する親書は、坂場三男・駐ベトナム大使を通じて手渡されるようだ。日本が狙う第2サイト受注のため経済産業省は、海外で原発の事業化調査(FS)を行う合弁企業の設立を計画している。




日本の首相が外国の首脳に親書を出すのは年数回程度というだけにトップセールスを果たそうとする鳩山首相の意気込みが感じられる。
ベトナムの原発計画は、日本のほかロシア、中国、韓国、フランスが名乗りを上げている。
日本の報道によれば、ズン首相が昨年12月にロシアを訪問した際、ベトナム中南部ニントゥアン省の第1サイト(ニンフオック郡フオックジン村)でロシア主導で原発が建設されることが決定、2月にロスアトムが受注したとされる。
■官民連携で海外展開
経済産業省は今年6月ごろまでに、原発の海外展開に向けたFS会社の設立を後押しする考えだ。これまで各社の思惑から意思決定が遅れ、オールジャパンとしての対外交渉の窓口がばらばらだったものを同社に一本化する。
原発の運営やFSのノウハウを持つ東京電力や関西電力などの電力会社や原発メーカーなどが共同出資して設立。沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水炉(PWR)など各社が得意とする炉型の採用の調整を行いながら、海外で地質構造や周辺環境の調査も行う。まずはベトナム第2サイト(ニントゥアン省ニンハイ郡ビンハイ村)の受注を目指し、次いで他国事業も見据える。
経済産業省によると、ベトナム第1サイトを受注できなかったことや、韓国の官民一体売り込みでアラブ首長国連邦(UAE)の原発受注に日本が失敗したことを背景に、事業会社設立の話が急速にまとまったという。
■正式決定はまだ?
ある日本企業の関係者は、「ベトナム政府は、ロシア主導の場合は財源で不安を感じている」と語る。実際、報道ベースで見ればベトナム政府はまだ、「正式には原発の受注業者・国を決めていない」との立場だ。
8日付ベトナム・インベストメント・レビュー(VIR)によると、昨年12月に国営ベトナム電力グループ(EVN)とロスアトムが協力覚書を結び、ズン首相は、ロシアに第1サイト建設の要請をプーチン首相に行った。しかし、「EVNとロスアトムは協議中の段階」と、ホアン・ホア・マイ原子力科学技術研究所(INST)副所長は語る。また、グエン・スアン・フック政府官房主任は、「まだ、どの国の企業が受注するかは決まっていない」とトイチェーのインタビューに答えている。
ベトナム政府は2014年の着工、20年の運転開始を目指している。逆算すると、FSを請け負う業者は今年中には決める必要がある。
■課題も山積
原発は、ホーチミン市から北東へ350キロ離れたニントゥアン省内の2カ所で計4基、出力計4,000メガワット(MW)を計画している。4基の総投資額は112億米ドルと、国家予算の半年分に相当する額のため、75〜85%は融資に頼らざるを得ないとみられる。
政府開発援助(ОDA)充当は、道路など周辺インフラだけに限られる。原発本体には今後、国際協力銀行(JBIC)など公的機関による融資や信用保証をしやすい体制の構築も必要となる。
同省の人口は58万人と、沿岸省の中で最も少ない。年間降水量はわずか700ミリ。砂丘が広がるため水田は少なく、エビ養殖、ブドウ栽培、製塩、採石業が特筆すべき産業だ。政府は、原発稼働前までに、太陽光や風力発電などの再生エネルギーや、観光開発に力を入れ、同省経済の底上げを図りたい考え。
一方、仮に日本が第2サイトを受注した場合、住民の理解も課題だ。ベトナムでは原発に対する反対運動が起きにくいとされるが、移転対象の同村タイアン集落の住民10人以上にNNAが昨年10月に聞いたところ、原発の立地予定地を知っているものの、自分の家屋が移転対象かどうか、EVNの計画を知っている住民はいなかった。
ある漁民は「もし海を埋め立てると、沖合に出る大型船を持っていない自分たちは打撃を受ける」と話す。EVNの計画が海岸の一部を埋め立てることを知らされておらず、住民への情報開示や職業訓練なども必要だ。一方、移転対象地域がわかると、補償金を目当てに家屋が建ち並ぶ恐れもある。
ベトナム人の報道関係者によると、原発に関する情報は政府から提供されないという。
仮に日本が受注できても、こうした住民移転に関する情報開示やベトナムの原発運営能力、建設費の資金など日本がクリアすべき課題も、発展途上国ゆえに山積している。受注は新たな試練の第一歩となる。(遠藤堂太)<ベトナム>