オーストラリア  2010年3月12日(金曜日)
労働法セミナー開催、関心高い新制度[労働]

日本貿易振興機構(JETRO)シドニーセンターは10日、新労使関係制度「フェア・ワーク・オーストラリア(FWA)」が今年1月に全面施行したことを受け、労働法セミナーを開催した。シドニー日本商工会議所(JCCI)、クレイトン・ユッツ法律事務所との共催。参加者は53人で、旧法からの変更点、注意点などに熱心に耳を傾けていた。【豪州編集部・安藤久史】



労働法セミナーの講師は、クレイトン・ユッツ法律事務所のパートナー弁護士、加納寛之氏。「豪州におけるフェアワーク法の概要」と題し、企業が再確認すべきポイントなどについて解説した。

FWAは、ラッド政権が段階的に導入を進めてきた新労使関係制度で、ハワード前政権下の労使改革法「ワーク・チョイス」で定められた労働条件がすべて置き換えられた。日系など外資企業を含むほぼすべての民間企業の労働者が、不当解雇や差別待遇、最低賃金、労働協約などについて、州法ではなく連邦政府が施行したFWAの管理下に置かれた。

■数多くの変更点も

加納氏は、セミナーで◇フェアワーク法の特徴◇豪州労働法の枠組み◇関連政府機関◇NES(全国雇用基準)◇労働協約(および現代化された労使裁定)◇事業継承◇解雇に関する諸問題◇フェアワーク法への移行――について細かく説明した。

特に、NES(全国雇用基準)では注意すべき変更点が目立った。最大週間労働時間では、「38時間に合理的な追加労働時間」とする内容に変化はなかったが、平均化する適用期間が、これまでの「12カ月」から「6カ月」に短縮された。労働時間を忙しい時期に増やし、暇な時期に減らしていた企業にとっては、シフトを年間ベースから半期ベースに切り替える必要があるという。

共働き夫婦の育児関連休暇(無給)期間は、これまでの「合計12カ月を夫婦で分け合って取得」から、「双方がそれぞれ最大12カ月を別々に取得」に変更。また、未就学児などを持つ従業員が、柔軟な勤務形態を請求できる権利や、地域社会貢献休暇、余剰人員整理解雇手当、雇用後にフェアワーク情報説明書の交付などが、新たに労働者の権利として認められている。

このほか、事業継承でも、外資企業にとって注目すべき変更点があった。事業継承した時に、これまでは「12カ月限定」だった労使関係文書の継承が、「継続適用」に変わった。例えば、企業が合併・買収(M&A)などを実施した場合、経営陣が変わったとしても既存の労働契約が継続されることになり、労使交渉が困難になる可能性もあるという。

加納氏は、「各企業にあった基準で、柔軟に対応していくことが必要だ」とアドバイスする。ただ、FWAが施行された1月以降にも関連の依頼が多いことに触れた上で、「責任の所在を明確にし、労務担当者が自らFWAへの対応を急ぐべきだ」と指摘。FWAに対応できていない企業も多く、豪州では労働契約の再確認が緊急の課題になっている状況についても明かした。

セミナーを開催したJETROシドニーセンターの児山信之所長は、「FWA施行から2カ月が過ぎ、どのように機能しているのか確認しに来た参加者もいた。依然として、事務所での対応に不安を感じる声はまだあるようだ」と説明。また、「今回は施行後の開催だったため、FWAの機能実態が把握できる半年後ぐらいにも、関連セミナーを開催したい」とも話した。

シドニーセンターでは、FWAの解説冊子「豪州におけるフェアワーク法の概要」を作成。冊子の無料配布も行うという。問い合わせはJETROシドニーセンター(電話+61-2-9276-0100、担当:稲澤)まで。

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