ベトナム・インドシナ 2010年8月19日(木曜日)
カンボジアに原発? :基幹送電網なく電化率2割の国で[公益]
日本のメディアは17日付の夕刊で、「カンボジア政府が原子力発電所の建設の検討を始めた。世界の重工メーカーにとって商機となる可能性だ」と大きく報じた。だが、カンボジアには原発導入の環境は整っていないのが実態だ。(遠藤堂太)

鉱工業エネルギー省(MIME)のイット・プラン副大臣が「カンボジア政府として2020年以後に原発を整備する方向で検討を始めた」と語ったという。
同省には副大臣職が7人もおり、サット・サミー副大臣も原発導入の可能性については2008年10月に地元紙で発言している。また、ティア・バニュ副首相兼国防相が昨年の国会で「原発は必要だ」と語っている。こうした発言はその後に議論とはなっておらず、個人または一部閣僚の意見かもしれない。
ただ、こうした原発発言の背後に「スイセム・エネルギー相が韓国とのつながりが深いためでは」と、ある関係者は指摘する。韓国は原発先進国に輸出する技術がないため、途上国・新興国に関心が高い。
■20年までに全村電化が目標
カンボジアの電力不足は深刻だが、発電容量を増やせば、解決できる問題ではない。
政府発表の計画では、自給できるエネルギーとしての水力、そして再生可能エネルギーを活用しながら地方電化の推進、20年までの全村電化を目指しているが、原発は含まれていない。
カンボジアの世帯電化率は2割程度。国内に幹線送電線が完備されておらず、主要都市や州都のみにカンボジア電力公社(EDC)の送電がある。しかも、発電の9割はディーゼル発電のため電力料金は周辺国に比べ2〜3倍高い、1キロワット時(kWh)当たり18米セントだ。
■国内総出力、あと20倍必要
将来、小型原発が開発されれば別だが、通常の原発1基は約1,000メガワット(MW)。原発は出力調整が難しいため、原発導入には安定した送配電の整備とともに発電設備総出力の10〜20%を原発が占める出力、つまり5,000〜1万MWのピーク需要が必要だ。07年時点でべトナムの総出力は約1万3,000MWで導入が検討されても問題ない。だが、カンボジアの総出力はわずか314MWだった。
MIMEによると、ピーク時の電力出力需要の予測は◇10年、432MW◇15年、1,349MW◇20年、2,400MW──。現在の10〜20倍の電力需要が導入に必要で、2030年でも時期尚早といえる。
■資金・人材は
需要の前に、資金や人材も課題だ。
昨年の国内総生産(GDP)は、108億米ドルだったカンボジア。経済規模はベトナムの8分の1だ。原発1基の建設には30億米ドルは必要だが、資金調達はベトナム以上に厳しい。
人口がベトナムの6分の1以下の約1,400万人で内戦もあったカンボジア。問題は、原発どころか水力も火力も運営できる人材が不在なことだ。07年に円借款契約が結ばれた70キロの送電線も未着工のまま。大型インフラの建設・運営ノウハウもこれからだけに、小規模な発電システムが同国には適しているかもしれない。
原発導入よりも、環境に配慮した水力発電や再生可能エネルギー、送配電線などの分野で日本の商機はありそうだが、韓国や中国が席巻しそうな勢いなのがカンボジアの実態だ。