マレーシア  2010年9月7日(火曜日)
本物志向の消費者増える:伊勢丹・湯谷信治氏[商業]

直近の4〜6月期(第2四半期)統計で前年同期比12.6%増の329億4,000万リンギ(約8,910億円)と好調な数字をはじき出した小売り業界。中でもデパートやスーパーマーケットといった非専門店は33.5%の成長と、市場をけん引している。このマレーシアの百貨店市場で1990年から「伊勢丹」を展開するイセタン・オブ・ジャパンの湯谷信治社長に、「本物志向の消費者が増えた」という市場の変遷などを聞いた。





−−−マレーシアでの事業展開は

現在は3店舗を経営している。1990年開店の「ロット10店」、98年の「KLCC店」、07年の「ザ・ガーデンズ店」だ。年商は約5億5,000万リンギ。従業員数は約550人となっている。

−−−3店舗は位置的にも近いところに固まっているが、各店の特色は

KLCC店は旗艦店、総合デパートとの位置付けだ。顧客は中華系が40%、マレー系が40%、そして観光客や外国人などが20%といった構成。ロット10店は働く若い女性をターゲットとしている。ミッドバレーのザ・ガーデンズ店はニューファミリーを対象とした店舗で、顧客の70%が中華系の若い家族だ。

都市型の百貨店は、出店地での需要にあったビジネスモデルを手作りしていく。需要にマッチする強みはあるが、時間やコストがかかる弱みもまたある。

クアラルンプール商圏は小さい。渋滞がなければ車で南から北、西から東へ移動しても20〜30分ほどだろう。3店舗間も車で10〜15分ほどの距離だ。重要な地域はもう押さえている、と言える。

−−−今後どのような店舗展開戦略を採っていくのか

重要地域には出店済みと言っても、いい場所があればこれからも出店を検討したい。郊外型店舗の検討も必要になるかもしれない。

具体的な計画では、KLCC店の全館リニューアルを来年に控えている。店は休業しないで、フロアーごとに改装していく。KLCC店は約12年間使ってきた。2014〜15年ごろの市場動向を予測しながら、新たな店舗設計を立てていく。

ロット10店は90年からあるため、器であるロット10の施設自体が小さくなっている。周辺にある後発の「パビリオン」などのモールは面積が15万〜20万平方メートルであるのに対し、ロット10は4万平方メートルほど。その分、店舗の「キャラクター」を前面に出していきたい。具体化は先になるが、30歳前後の働く女性に特化し、そのターゲットが買いやすくて見やすく、短時間でショッピングを楽しめるような“ファッションコンビニエンスストアー”といった店舗にしたい。

−−−人口2,800万を数えるマレーシアだが、伊勢丹の顧客対象はどれくらいいるのか

地理的に言えばクアラルンプール商圏は人口200万、首都圏クランバレーまで広げると400万だろう。一方で当社は伊勢丹会員の利用率が高く、売上高全体に占めるメンバーの消費は54%に達している。また消費額で上位20%の会員が、その54%のうちの約7割を占めている。この上位20%、約13万5,000人の高収入でコアな利用者を戦略顧客と位置付けている。

−−−そのコア顧客だが、消費動向など変化は感じられるか

経済成長のわりにはあまり変化は感じない。ただわれわれがメインターゲットとしている25〜45歳といった年齢の顧客は、海外の大学を卒業した人も多い。この海外のサービスに触れてきた層の間で、本物志向や価値の多様化が生まれてきている。

先ごろ開催した「北海道フェア」で言えば、ただ北海道のものを並べても売れない。日本からラーメン職人やせんべい職人を呼び、消費者はその人たちからの説明を聞いて買う、という時代になった。経済的な豊かさから精神的な豊かさへの変化、という言い方もできるかもしれない。

−−−変化を取り込むには

「ファッションの伊勢丹」として、これからも日本から素材を輸入して現地で製造するインハウスブランドファッション、それとインターナショナルブランド、また日本製品で差別化を図る。

消費者の変化として他人とは違う「わたしだけのもの」という独自性へのニーズがある。「健康志向」の高まりも見逃せない。KLCC店の改装ではそういうものに答えられればと思っている。

−−−最後に終盤戦にさしかかったメガセールについて

マレーシアには観光局主導のセールが年3回ある。これでは1年中バーゲンのような状態になってしまうが、ただその期間中に最低1週間セールを実施すればよいことになっている。今年はセールの日数を3割削減した。セールだけでなく各種企画やプロモーションなど、消費者にもっと違う貢献ができると考えている。(聞き手・榊原健)

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