オーストラリア 2010年9月8日(水曜日)
ギラード政権続投:新資源税の導入確実に [政治]
ギラード首相の続投が確実となった。労働党政権維持のカギを握っていた無所属議員3人のうち2人が7日、同党支持を表明。労働党は過半数(76議席)を確保したことで、組閣人事など政権運営に向けた足固めに取りかかる。日系企業の関心が高い鉱物資源利用税(MRRT)の導入がほぼ確実となり、連立を組むことになった環境政党グリーンズ(緑の党)との交渉次第では税率引き上げの可能性もありそうだ。【豪州編集部・安藤久史】
ギラード首相は、「透明性の高い政権運営を担っていく。すでに3年間の安定した政局にする準備はできている」と勝利宣言をした。来週にも組閣人事を発表する予定だ。
総選挙前に支持率低下を理由に交代した前首相のラッド氏の起用については、「ラッド氏が望むのであれば、大臣のポジションを準備している」と話した。政権獲得が決まった時点でのラッド氏の起用発言は、表面化しつつあった党内不和説を押さえ込む目的があったともみられている。
■7日午後に決着
総選挙の結果、1940年以来の「ハング・パーラメント(どの党も過半数を持たない中ぶらりん議会)」となったことを受け、労働党、保守連合(自由党、国民党)ともに無所属議員の取り込みを図っていた。
7日午前の時点では、労働党が総選挙で確保した72議席に、グリーンズ1議席、無所属1議席(タスマニア州選出のウィルキー氏)を加え、合計議席数を74としていた。保守連合は即日開票後の73議席から変化はなかった。
政権獲得のカギを握っていた残る無所属3議員は7日午後、それぞれ支持政党を明らかにした。ニューサウスウェールズ(NSW)州ライン選挙区のロブ・オークショット氏、NSW州ニューイングランドのトニー・ウィンザー氏が労働党支持を表明。労働党が76議席となり、政権獲得が決まった。
保守連合支持は、ボブ・カッター氏(クイーンズランド州ケネディー選挙区)の一人。保守連合は合計議席数を74とし、政権獲得には一歩及ばなかった。
■カギは地方インフラ拡充
労働党が無所属2議員から支持獲得した背景には、「地方インフラ政策の拡充」を確約したことがある。パシフィック・ハイウエーの改修やウィンザー氏の選挙区内にあるタムワース病院の再開発、地方インフラ・ファンドなどに巨額資金が充てられる見通しだ。
ギラード首相は、「安定した政権運営を担うため、無所属2議員が重要視する地方開発を積極的にサポートしていく」と明言した。
オークショット氏は、地元ではブロードバンドサービスの普及率が低いため、総選挙直後から労働党が推進する「地方都市を含めた全国ブロードバンド網(NBN)整備計画」を支持していた。保守連合は、選挙キャンペーン時には「同計画の白紙化」を訴えていた。
労働党のNBN整備計画は、ファイバーケーブルの敷設でインターネット接続速度を最大で毎秒100メガビット(Mbps)を提供するもの。人口カバー率は93%で、残りの7%はワイヤレスと人工衛星を組み合わせて最低12Mbpsを提供する。
一方、保守連合の計画では人口カバー率は97%に達するものの、光・同軸ハイブリッド通信網(HFC)ケーブルやDSL、固定ワイヤレスなどの技術を使って最低速度12Mbpsとしていた。
オークショット氏は、「NBN計画だけでなく、労働党が提案した地方インフラ拡充案は今までにない規模となる。地方での教育現場にも予算が投入される見通しだ」と期待感を表明した。
■新資源税に注目
日系の資源業界関係者は、「重要視しているのはMRRTと、豪州経済の行方」と指摘。労働党が政権を獲得したことで、MRRT導入がほぼ確実となったが、より高い税率を要求するグリーンズの意向により、どのような修正案が示されるか注目しているという。
また、豪州経済については、「政権確保はしたが、不安定な状況は変わらない。どこまで安定した政権運営が担えるか、豪州進出企業としては気になる」と話した。政局が不安定な状況下では、政策決定後に幾度と修正案が提示される可能性があるからだ。事業投資をする上で、将来の見通しが立たず二の足を踏む状態になることを恐れているようだ。
政権の行方が決まったのは、総選挙から17日後となった。財界団体の豪ビジネス・カウンシル(BCA)は、すでに「新政権発足後100日間の最優先課題」とした改革案を提示。公約に掲げてきた政策を、どこまで実行に移すことができるか注目が集まっている。グリーンズに無所属議員を抱えた与党・労働党が、どこまで安定した政権運営を担うことができるか。「安定した豪州政局」に期待する声は大きい。