EU
欧州でも金融の混乱深まる[金融]

米大手投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破たんを受け、16日も世界の主要市場で株安とドル安が進んだ。金融危機は保険業界にも広がりを見せており、実体経済への影響に対する懸念も強まっている。銀行の貸し渋りや金融業界の失業拡大に加え、企業や消費者の心理に影響が及ぶことも避けられなくなってきた。

15日に続いてこの日も投資家による株式市場からの資金引き上げがとどまらず、世界的に株安が連鎖した。日本、韓国、香港では前日が休場だったこともあり株価が急落。終値は日経平均株価が4.95%安となったほか、香港や韓国でも5%を超える下げ幅だった。欧州でも主要市場で寄り付きから一段と値を下げた。

金融市場の混乱を沈静化するため、主要な中央銀行は相次いで短期資金の緊急供給に踏み切っている。欧州中央銀行(ECB)は前日を大幅に上回る700億ユーロ(10兆5,700億円)の翌日物を追加供給すると発表。15日には300億ユーロの供給に対し、56行から総額1,024億8,000万ユーロに上る応募があったためだ。英中銀イングランド銀行も前日の4倍に上る200億ポンド(3兆8,000億円)の供給を決めている。

■欧州中銀の利下げ観測も

一方、15日には保険で世界最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の経営危機が表面化。信用格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とムーディーズ・インベスターズ・サービスがそろって格下げを発表したのを受け、追加資金の調達に迫られた。AIGは6月までの9カ月にサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題に絡んだ評価損が原因で、185億ドルの損失を計上。7〜9月期には評価損が300億ドルに上るとみられている。AIGは100カ国以上に拠点を持ち、世界中の企業のリスクに対する保険を担っており、欧州を含めた金融機関との投資契約は巨額に上る。さらに個人向けの保険商品を手掛け、従業員は全世界で11万6,000人に上る。破たんすればリーマンとは比べものにならないほど大きな影響が出るのは必至だ。

一方、英3位の金融機関バークレイズは16日、リーマンの一部事業を取得する方向で話し合いに入ったと明らかにした。対象には証券の仲介・取引部門を中心に合併・買収(M&A)アドバイス業務も含まれ、米国での証券事業免許を確保する考え。建物や約1万人の従業員も引き受けるが、資産運用部門などは除外されるもようだ。バークレイズは当初、リーマンの持ち株会社を含めた本体の買収を検討したものの、米政府による支援の保証がないため見送った経緯がある。今後リーマンからの顧客離れや従業員の引き抜きが進むことも予想され、早急な決断が迫られる。

米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和に動く中、これまでECBはインフレ抑制を優先させる姿勢を取ってきた。しかし景気の先行き不透明感が高まる中での金融危機の深まりで、利下げに動く公算が大きくなってきた。

■―エキスパートはこうみる―エコノミスト・小林智子氏

リーマン・ブラザーズを救うか否か――。米当局は難しい判断を迫られた。救えばモラルハザードが起きるし、救わなければ影響は取引先の金融機関に及ぶうえ、3月にベアー・スターンズを救済していることから、線引きが問題となる。結局後者を選んだため、次はAIGの行方が焦点となるだろう。リーマンと違いAIGはリテールを手掛けているため、破綻させるのは簡単ではない。

日本は山一証券を自主廃業させたものの取引は保全して救ったが、米国はリーマンを救わなかった。米国は日本と同じ轍を踏むまいと思ったのか、軍事力や経済力を背景にドルに自信があるのか。しかし、この先ドルの信認低下は必至で、ユーロと元、円が高くなるだろう。ドルが暴落でもすれば1929年の世界恐慌の再来という懸念もある。

誰が大統領になろうと、米国経済に余裕がなくなれば政治は必ず保守化し、不干渉主義を取りがちだ。そうなると国際テロ組織アルカイダやタリバンが息を吹き返す可能性がある。そういったとき、各国は統制色をむき出しにするようになる。すでにロシアにはその傾向が見られる。ここで必要となるのは、自由主義や市場万能主義に代わる新たな思想だといえよう。

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